当然普通のお客さんはなかなか居つかないわけだけど、一人だけ
「なんでこの人が?」
というおばちゃんが来店するようになった。齢は50近く、それこそバッグの中からアメちゃん出しそうな勢いの、いわゆる普通にパンチの利いたおばちゃんだ。
フリー経験はあまりないらしく、先ヅモはあたりまえ、点数計算もかなり危うい感じだったし、夜中になるとツモ番が廻ってくるまでに居眠りをしていたこともあった。若者中心のオラオラ系点五雀荘の中にあって明らかに異質だったけど、家が店に近いらしく、毎晩のように打ちにきていた。
そんなある日、僕が買ってきたこの曲を店で流していた。
おばちゃん:「あ。RIZEだ。」
ヒゲロング:「え?RIZE知ってるんですか?」
あまりのギャップにびっくりしてよくよく聞いてみると、おばちゃんはRIZEのドラマーのママらしい。RIZEのボーカルがあのスーパーギタリストcharの息子だというのは知っていたけど・・・。
「こんなことあるんだなあ」
と思ったが驚くのはまだ早かった。
ある時おばちゃんが
「RIZEの出るイベントにゲストで入れてあげるからおいでよ」
と誘ってくれたので、メンバー連中みんなでライブに行ってきた。
RIZEのライブが終わるとステージに現れたのは、char、そしてなんとあのおばちゃんだ。charをバックバンドに歌い始めるおばちゃん。
一同:「かっけー!!!!」
そりゃかっこいいはずだ。
おばちゃんの名前は金子マリ。“下北のジャニス”との異名をもつ伝説的シンガーだった。
>>金子マリ(goo音楽)
ただのおばちゃんだと思って先ヅモを注意していた相手が、日本ロック史に残る名ヴォーカリストだったとは。
しがないマイホームパパが実は大統領直属組織のスパイだったという、シュワルツネッガー主演の“トゥルーライズ”という映画があったが、まさにそんな気持ちだった。
▼若かりし日の金子さん。超パワフルだけど、この人先ヅモします。
なんで唐突にこの話を思い出したかというと、先日亡くなった忌野清志郎と金子さんがお互いのアルバムに参加したりする関係だったからだ。
▼競演。あんまり映らないけど、タンバリン叩いてるのが清志郎。
この記事をアップするにあたりwikiをみてみたら、金子さんのアルバムに参加してるゲストが忌野清志郎をはじめとし、number girlの向井秀徳からさだまさしまで、レジェンド級のビッグネームばかりで改めてびびらされた。
こんなにすごい人だと知っていたら、ちょっとの先ヅモくらい許してあげたのに。
